★デジタブル最新号★     

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                                                                      最新号 2008年9月号  

 

                                                    

 

 

  1. Priscilla Ahn
    何と透明感のある歌声なのだろう。一瞬にしてまわりを囲む空気がみずみずしいものに変っていく──プリシラ・アーンの紡ぐ音楽を初めて耳にした瞬間、そんな感情がカラダの奥からこみあげてきた。彼女の音楽には、聴いた誰もの心を潤す不思議な魔法があるような気がする。米ペンシルヴァニア生まれの24歳。ロック好きの父親の影響で、14歳の頃よりギターを弾き始め、16歳の頃には地元のオープン・マイク・ナイト(アマチュア・ミュージシャンたちがパフォーマンスするステージ)に出演するように。高校を卒業した後は、大学進学の道をあきらめ、本格的に音楽活動をスタート。エイモス・リーなど、さまざまなミュージシャンたちと出会い、やがてよりよい音楽環境を求め、ロサンジェルスに渡る。そこで、ウェイトレスの仕事などをしながら音楽的才能を磨き、ついに今年、ジャズの名門として知られるレーベル《ブルーノート》よりアルバム『グッド・デイ』でメジャー・デビューを果たした。アメリカでは6月にリリース。ここ日本においても、同レーベルに所属するノラ・ジョーンズのような優美な雰囲気と、彼女が現在暮らすロサンジェルスの開放的でメロウな雰囲気が調和した、見事な音楽世界が広がっているとして既に評価が高い。プロデュースは、ベックやR.E.Mなどと共演し、ネリー・ファータド、リッキー・リー・ジョーンズの楽曲なども手がけているジョーイ・ワロンカー。本作は、彼や名うてのミュージシャンのサポートのもと、アコースティック・ギター、ベース、ドラムのシンプルなアンサンブルを基本に、ほぼライヴ・レコーディングで完成させていったという1枚。冒頭に収録の「ドリーム」から、彼女の美しくみずみずしいサウンドの魅力を余すところ無く伝えている。アコースティック・ギターのシンプルな音色から始まり、後にストリングスなどが加わっていくドラマティックなサウンド展開の楽曲。それにのせる彼女のささやくような歌声は、シルクのような優しい肌触りで、タイトルどおり美しいまどろみの世界を見せてくれるのだ・・・。
  2.  
  3. MELODY GARDOT
    2003年にデビュー・アルバムでグラミー賞8冠をさらい、その独創的なスタイルで世界の音楽シーンを席巻したノラ・ジョーンズの登場以来、時代は彼女のような、ジャンルをクロスオーヴァーした心地よいサウンドとナチュラルな歌声を持った女性シンガーを求めるようになった。既に輸入盤市場で話題のメロディ・ガルドーも、そんな“ポスト・ノラ”的な期待を集める新人のひとり。抑制のきいたアコースティックな雰囲気をバックに、ちょっぴりスモーキーな歌声で、聴く者を強く惹きつけるシンガー・ソングライターだ。ノスタルジックだけど、ノラが持っている、どこかホンワカとして牧歌的な世界とは明らかに違う、孤独な哀愁を根底に漂わせているのが彼女の個性。例えばデビュー・アルバム8曲目の「ラヴ・ミー・ライク・ア・リヴァー・ダズ」(ピアノに導かれて物憂げに歌い出す彼女は、まるで懇願するように悲痛に母音を延ばす)を聴くと、心の奥にある井戸に石を投げ込まれたような切なさに襲われるのは何故だろう? 1985年生まれ。米国フィラデルフィアの母子家庭で育ち、音楽を趣味としていた彼女は、16歳から地元のピアノ・バーで仕事を得て学費の足しにしていたという。地元の大学でビジネスと服飾を学んでいた19歳の時、運命が彼女を襲う。自転車で交通事故に遭い、瀕死の重傷を負って1年間も寝たきりになったのだ。その後リハビリを始められるまで回復するが、脳の損傷は深刻で、記憶力と視覚及び聴覚に障害が残り、骨盤骨折の痛みにも絶えず悩まされる。そんな時、医者から音楽療法を勧められ(音楽が脳の神経作用に作用することは医学的にも証明されている)ベッドでギターを演奏するようになった。曲を作り、記憶力を助けるためにテープに録音していたのを、ある友人がMySpaceにアップしたところ反響を呼び、地元のラジオ局でも放送されるようになって、レコード会社との契約が実現したというわけだ・・・。
  4.  
  5. NE-YO
    大ヒット・シングル「ソー・シック」に代表される良質な作風で衝撃を与えた2006年のデビュー作『イン・マイ・オウン・ワーズ』、そして同じく大ヒットしたタイトル曲を生んだ翌年の2nd『ビコーズ・オブ・ユー』。ともにビルボードのチャートで1位を記録した2作品には、その時点でNe-Yoの実力がはっきりと反映されていた。さすがはリアーナ、ジャネット・ジャクソン、メアリー・J. ブライジ、セリーヌ・ディオンなど数多くのアーティストに楽曲提供してきた男だけある。『イン・マイ・オウン・ワーズ』にも『ビコーズ・オブ・ユー』にも流行に惑わされることのない普遍性が表れていたし、リスナーの立場からすればそれは「いつまででも聴き続けられる」という安心感にもつながるものだった。だからこそ、彼はグラミー賞アーティストとしての存在感を確立できたというわけなのだろう。成果主義がまかりとおる世のなかにあって、“本質”だけで勝負して成功するというのはものすごく難しいことだというのに。そんな成果主義的な風潮に対しては彼自身もやはり違和感を抱いていたようで、ついに登場した3rdアルバム『イヤー・オブ・ザ・ジェントルマン』について語る際にはあえて“品格”という言葉を用いている。ヘタをすると「それ死語でしょ」と突っ込まれかねない言葉だが、それをあえて前面に押し出すことには大きな意味があるように思える。品格はもともと彼の音楽に備わっていたものだが、それと同時に、音楽が音楽であり続けるためになんとしてでも持ち続けなければいけないものでもあるからだ。具体的にいえば品格とは、サミー・デイヴィスJr.やフランク・シナトラなど、過去のトップ・エンタテイナーが備えていた鋭さを指すと彼は答えている。『イヤー・オブ・ザ・ジェントルマン』というタイトルも、彼らへの尊敬の念を込めたものなのだそうだ。いわんとすることは、ものすごくよくわかる。いいかえればそれは、アーティスト=表現者=エンタテイナーとしてのプロ根性を原点から見つめなおそうという提案であり意思表明だ。間違っても、彼らがやっていたような音楽をいまの時代に再生するという意味ではない・・・。
  6.  
  7. クリック・ガールズ
    これぞガールズ・ポップのニュー・スタンダード!と快哉をあげたくなるアーティストが登場した。デスティニー(14歳)&パリス(13歳)姉妹と、2人の大親友アリエル(14歳)によって結成された、米国はニュージャージー州出身のガールズ・グループ、クリック・ガールズ。エミネム、ファーギー、ブラック・アイド・ピーズなど、数々のモンスター・アーティストを生み出してきたレーベル《インタースコープ》からデビューし、そのトップであるジミー・アイオヴィン自らが A&Rとなり指揮をとっているのだが、それは彼が3人に、シンガー/パフォーマーとしての実力、音楽に対するプロフェッショナルな姿勢、そして無限のポテンシャルを感じたからこそだろう・・・。
  8. Katy Perry
    自分の魅力を分かっている女は手に負えないものだ。おまけに才能があるならなおのこと。このカリフォルニア出身の23歳は、まさにそういう女の子。じゃなかったら、自分のことを「リリー・アレンのヤセ版、エイミー・ワインハウスの太っちょ版」なんて言いはしない。しっかり自分を持っているからこそこんなジョークが言えるのだ。何と言っても、全米シングル・チャート4週連続1位である「キス・ア・ガール」のインパクトがすごい。「女の子にキスしちゃった/そしたら気持ちよかった」と、アメリカ中のパパやママや頭のカタい大人たちや、もしかしたら本物のレスビアンの人たちをも激怒させただろう。実は、ケイティにとって、こういうスキャンダラスな話題は今回が初めてじゃない。昨年リリースした「ユー・アー・ソー・ゲイ」もその内容からやはりカルト・ヒットになっており、あのマドンナがお気に入りとして紹介したという逸話がある・・・。
  9.  
  10. THE DEY
    日本でもなじみの深いアース・ウインド・アンド・ファイアーの名曲「宇宙のファンタジー」。この曲を大胆にサンプリングしたナンバーを最近よく耳にする。プエルトリカンの新人R&B/ヒップホップ・グループ、The DEYのデビュー曲「GIVE YOU THE WORLD」だ。ニューヨークはサウス・ブロンクス出身のプエリトリカン、デヴァイン(D)、キューバ系の父とプエルトリカンの母の間に生まれたイェヨ(Y)の男性MC2人に、ニューヨークでプエルトリカンとアフリカン・アメリカンの間に生まれたシンガーのエラン(E)を加え、3人の頭文字を組み合わせたのがグループ名の“DEY” というわけだ。プエルトリコで出会ったデヴァインとイェヨはグループを結成。2005年、そこに加入したのが、音楽・芸能専門の高校で声楽を学び、ミュージカルなどの出演していたエランだった。すぐにデモテープ作りを開始した3人はソニーと契約。翌年にはポーラ・ディアンダのヒット曲「ウォーク・アウェイ」にフィーチャーされ、表舞台に登場した・・・。
  11.  
  12. THE METROS
    これは是非とも若いキッズだけではなく、こだわり派の大人のUKロック・ファンにも聴いてもらいたい。それが南ロンドンから突如登場したこの5人組、ザ・メトロスだ。The Viewを輩出した《1965 レーベル》が世に送る次なるティーン・バンドということで、耳の早い昨今の同世代のUKロックリスナーからは以前より注目されていた彼ら。確かに、ロウファイなまま荒削りな側面こそ今どきな感覚だが、彼らの奥底に漂う時にアーシーでファンキーなリズム、時にクールに洒落た、モッズ風味でさえあるスカのグルーヴ、といった音楽要素には、単なるバンドブームという時の勢いだけでは決して生まれ得ない音楽への深い造詣と愛がしっかりと息づいている。それもそのはず、彼らが敬愛するのは、イアン・デューリーやスクイーズ。70年代の登場当時からその音楽性の通な渋さで愛されていた職人気質なパブロックのアーティスト。こういう名前をすぐにフェイヴァリットにあげられるところにも抜群なセンスを感じさせるが、そうしたエッセンスを理屈っぽくなく隠し味のようにポップかつ奥深くしみ込ませるあたりにミュージシャンシップの高さを感じさせる・・・。
  13.  
  14. ナイン・インチ・ネイルズ
    「遂に解き放たれた!」「こういうのを待っていた!」そう快哉をあげるファンも多いことだろう。それくらい、ナイン・インチ・ネイルズの新作『ザ・スリップ』は開放感に溢れている。思えば、2005年のアルバム『ウィズ・ティース』以降のナイン・インチ・ネイルズは、これまでの“悩める寡作主義者”のイメージを払拭するほど、衝動的なスピードで作品発表を続けていた。2007年には“2年以内”という、過去にない短い間隔でアルバム『イヤー・ゼロ』を発表。そしてこの2008年に入ると、インストゥルメンタル・アルバム『ゴースツ:I-IV』、そして、この『ザ・スリップ』の2枚の作品をインターネット先行で立て続けの発表である。これまで“待つ”ことがファンのひとつの通過儀礼でさえあったNINのことを考えると、この別人のような活発ぶりには、戸惑いさえも覚えてしまう。最近ではトレント・レズナー本人のルックスまで、90年代の不健康な引きこもり風な姿から一転して、アスリート風に健康になってしまっているし・・・。
  15. Slipknot
    全世界を極悪ヘヴィ・サウンドで恐怖のどん底に落とし入れ続ける米アイオワ発の最凶モンスター・バンド、スリップノットが、約4年ぶりとなるニュー・アルバム『ホール・ホープ・イズ・ゴーン』をリリースする。これまでの彼らの魅力を最大限まで高め、なおかつ新たな要素も詰め込まれた激烈な作品だ。このアルバムを“声明文”そのものだと主張するフロントマン、コリィ・テイラーは次のように語る。「俺たちが創り上げてきた全てのアルバムは、それぞれの時期のその空気感に言及した声明だった。俺が思うに今のこの時代こそ、より成熟し、最も美しく、そして最も力強いものだと言える。このアルバムで俺たちは、今まで歩んできた道のり、この先に続いている道、そして人類として今ここにいる場所、その総てを指し示す作品を作り上げたんだ・・・。
  16.